メニュー

多汗症

「緊張すると手がびしょびしょになる」
「ワキの汗染みが気になって仕事に集中できない」
「汗のせいで握手をためらってしまう」

もし一つでも心当たりのある方は、多汗症かもしれません。
多汗症は、決して「我慢する病」ではありません。当院では、手のひらやわきの下など、局所的な多汗症に対し、最新の処方薬やボツリヌス注射など、豊富な治療選択肢をご用意しています。
長年の汗の悩みから解放され、自信を持って日常を送るために、まずは専門的な診断を受けてみませんか。

多汗症とは

多汗症は、体温調節に必要な量を超えて、日常生活に支障が出るほど過剰に汗をかく疾患です。
単なる「汗っかき体質」とは異なり、交感神経が失調し、体温上昇とは関係なくエクリン汗腺から汗が過剰に放出される病的な状態であり、医学的な治療が必要です。
多汗症は、手のひら、わき、足の裏などの限られた部位(局所多汗症)、または全身(全身性多汗症)に多量の汗が出ることが特徴です。

多汗症で見られる病的な発汗には、以下のようないくつかの明確な特徴があります。

  • 体温調節とは無関係な発汗:暑さや運動といった体温の上昇がなくても、過剰な汗が出ます。
  • 断続的な状態:常に汗が出続けているわけではなく、多汗と無汗の状態が交互にみられます。精神的な緊張、不安、あるいは気温・運動による体温の上昇がきっかけとなり多汗になることがあります。
  • 左右対称性:症状は体の左右で同時に発汗するのが一般的です。
  • 睡眠中の軽減・停止:眠っている間は発汗が止まるか、軽減することが多いです(特に原発性局所多汗症の場合)。
  • 長期化と多部位性:多くの場合、小児期に発症し、15歳ごろを過ぎても症状がおさまらず、成人になっても続く傾向があります。発汗しやすいのは手のひら・顔・わき・足の裏・頭部の5か所で、通常、複数の部位で多汗になることが多いです。

このような病的な発汗が日常生活に支障をきたすにもかかわらず、多汗症を病気として認識せず、症状を放置している人が数多くいるのが現状です。

多汗症の症状とは

 

多汗症は、特に以下の5つの部位で発汗しやすく、症状が日常生活に具体的な支障をきたします。

部位 具体的な症状と生活への影響
手のひら(手掌多汗症) 汗で紙や書類が濡れて破れる、鉛筆書きが困難、スマートフォンやPC操作がしづらい、握手や手をつなぐことをためらうなど、対人関係や学業・仕事に大きな影響。
わきの下(腋窩多汗症) 服に大きな汗染みができ、着る服の色や素材が限定される、体臭(わきが)を伴う場合に過度に不安になるなど、清潔感やファッションへの影響。
足の裏(足底多汗症) 靴や靴下が常に湿って蒸れる、靴の中で足が滑って転びそうになる、皮膚炎や水虫のリスクが高まる、強い悪臭の原因となる。
顔面・頭部 顔が常に汗で濡れているように見え、清潔感が損なわれる、女性はメイクが崩れやすい、人前で恥ずかしさを感じやすい。
全身 全身の衣服が湿る、大量の汗による脱水や体温調節の困難が生じることがある。(主に続発性多汗症や全身性多汗症の場合)

多汗症は、発汗量の多さから、毛穴が詰まって皮膚トラブルがみられたり、においを発したりすることもあります。このように、具体的な症状が自己肯定感の低下や人目を避ける行動につながり、社会的な苦痛を感じやすい疾患だといえます。症状自体がストレスを招く原因となり、悪循環を生み出すことも少なくありません。

多汗症の主な分類とは

多汗症は、大きく分けて以下の2つに分類されます。

1. 全身性多汗症

身体全体の汗の量が多くなる状態です。

  • 原因:内分泌疾患や神経系疾患など、特定の病気によって引き起こされることがあります。例えば、甲状腺疾患(バセドウ病)や、糖尿病を発症した初期の段階で現れる多汗、更年期のホットフラッシュなどが知られています。

2. 限局性多汗症(局所多汗症)

わきや手足など特定の部位に汗が集中する状態です。

  • 主な発汗部位:手のひら、わきの下、足の裏、顔面、頭部に多く見られます。
  • 原因:ほとんどの場合、原因となる病気が見当たらない原発性のものが多いです。

これらの過剰な発汗は、日常生活(仕事、学業、対人関係など)に深刻な支障をきたし、患者のQOL(生活の質)を大きく低下させるため、適切な診断と治療が重要です。

多汗症の原因とは

多汗症の原因は、大きく分けて疾患や薬が原因の「続発性」と、あきらかな原因のない「原発性」に分類され、さらに発汗部位(全身性か局所性か)によって主な原因が異なります。

1. 原発性多汗症(原因不明)

多汗症の患者さんの多く(特に手のひらやわきの下など、特定の部位に汗が集中する局所性多汗症)がこれに該当します。原因は特定できていませんが、以下の要因が示唆されています。

  • 交感神経の過剰な活動(自律神経の乱れ):
    汗を出す司令塔である交感神経が、体温調節に必要なレベルを超えて過剰に興奮しやすいため、汗腺(エクリン腺)を刺激し、過剰な発汗を引き起こしていると考えられています。
  • 遺伝的要因(家族歴):
    家族や親族に同じ症状(多汗傾向)がみられるケースが多く報告されており、遺伝的な関与が指摘されています。
  • 精神的要因(トリガー):
    精神的な緊張や不安、ストレスは、多汗症の発汗を誘発したり悪化させたりするトリガーにはなりますが、それ自体が病気の根本的な原因ではありません。
  • その他の体質的要因:
    わきのにおいが強い場合(通常の人よりもアポクリン汗腺が大きく、汗の分泌量が多い)も、併せて示唆されることがあります。

2. 続発性多汗症(原因がある場合)

何らかの病気や薬の副作用の結果として、多汗が引き起こされるものです。続発性多汗症の場合、「全身性」と「局所性」で原因が異なります。

A. 全身性多汗症の原因

全身に多量の汗をかくおもな原因は以下の通りです。

分類 おもな原因疾患・要因
内分泌・代謝性発汗 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)、糖尿病(初期段階や低血糖時)、更年期障害(ホットフラッシュ)、肥満症など
神経障害による発汗 パーキンソン病など
感染症による発汗 結核、敗血症などの慢性感染症
薬の副作用による発汗 非ステロイド抗炎症薬、ステロイド薬、向精神薬、睡眠導入薬など
その他 運動、高温の環境、発熱による温熱性発汗、特発性発汗(原因不明)など

※薬の副作用による発汗が疑われる場合は、処方されたかかりつけ医に確認が必要です。

B. 局所性多汗症の原因

特定の部位に多量の汗をかくおもな原因は以下の通りです。

分類 おもな原因・誘因 主な発汗部位
精神性発汗 精神的緊張によるもの(局所性多汗症の原因で最も多いとされる) 手のひら、足の裏、わきなど
味覚性発汗 辛いものを食べたときなど 顔面
神経障害による発汗 胸部交感神経切除後など(左右非対称に発汗する場合に可能性が高まる) 体幹、特定の部位
その他 皮膚疾患による局所多汗症など 患部

続発性多汗症の場合、原因となっている病気の治療を行うことで、多汗の症状も改善に向かうことが期待できます。

多汗症の診断とは

多量の汗に困っていても「ただの汗っかき」と自己判断し、放置している人は少なくありませんが、多汗症は医学的に診断・治療が可能な疾患です。

1. 多汗症のレベルと診断基準

(1) 局所多汗症の診断基準

局所的に過剰な発汗が明らかな原因がないまま6カ月以上認められ、以下の6項目のうち2項目以上に当てはまる場合に診断されます。

  • 最初に症状が出るのが25歳以下である
  • 身体で左右同じように発汗が見られる
  • 睡眠中は発汗が止まっている
  • 1週間に1回以上多汗のエピソードがある
  • 家族に同じ病気の人がいる
  • 汗によって日常生活で困る事がある
(2) 重症度の目安(手のひらなど)

発汗の程度に応じて、以下の3段階のレベルがあります。

レベル 状態の目安
レベル1 皮膚がいつも湿っている、触ると汗ばんでいると分かる、テカリや艶が過度に見える。
レベル2 汗が水滴となって皮膚についている。見た目にも汗と分かるが、汗が流れることはない。
レベル3 汗が水滴となってしたたる。

【重要】レベル1であっても、日常生活に支障が出ていると感じる場合は、医療機関への相談が推奨されます。

2. 多汗症の診断の流れと検査

多汗症の診療は主に皮膚科で行われます。治療のきっかけとなるのは、明確な診断基準と重症度分類です。

(1) 問診と診察

原発性(原因不明)か続発性(疾患が原因)かを切り分けるため、以下の情報を詳しく確認します。

質問される主な内容 目的
発汗の時期 睡眠中に汗をかくか?(原発性は止まることが多い)
全身症状の有無 甲状腺や糖尿病などの疾患を疑う情報がないか。
家族歴 親族に多汗症の人がいるか(原発性を疑う)。
(2) 続発性多汗症の可能性を調べる検査

全身性多汗症や続発性が疑われる場合、以下の検査が行われます。

  • 血液検査:甲状腺ホルモン値、血糖値・HbA1cなど、原因となる疾患の確認。
  • 尿検査:糖尿病や腎機能の異常の確認。
(3) 重症度や発汗範囲の客観的な検査

治療の必要性や効果を判断するため、以下の検査が行われることがあります。

  • ヨード・デンプン反応法(Minor法):発汗部位が青紫色に変化するのを利用し、発汗の範囲や程度を視覚的に確認。
  • ガーゼ法(重量測定):汗を吸収させ、重さを測ることで客観的な発汗量を測定。
  • HDSSスコア:患者の自覚症状に基づき、日常生活への支障度を4段階で評価(治療適応の判断に使用)。

多汗症の治療法とは

多汗症の治療は、発汗を促す交感神経節の活動を抑える作用を加えることを目指します。現在では症状の部位やレベルに応じた多くの有効な選択肢があります。

第1選択肢:外用薬による治療

局所多汗症に対する治療の第一選択肢です。発汗を促すアセチルコリンを阻害する作用(抗コリン作用)を持つものなどが主流です。

治療法 部位と特徴 保険適用
外用抗コリン薬 エクリン汗腺が汗の指令を受け取れないようブロックする。ワキ(エクロックゲル、ラピフォートワイプ)、手のひら(アポハイド®ローション)に適用。
塗った部分にのみ作用するため副作用が少ない。
あり
塩化アルミニウム製剤 汗の出口にフタをつくり、汗を閉じ込める。ワキ、手のひら、足のうらに有効。発汗量が多いと効果が限定的となることや、約半数にかぶれの副作用がみられることがある。 なし(自費)
制汗剤(パースピレックスなど) 塩化アルミニウムと同系統だが、肌への刺激性を抑えた製品。 なし(自費)

第2選択肢:内服薬・その他の治療

外用薬で効果が不十分な場合や、広範囲の発汗にお悩みの方に検討されます。

(1) 内服薬【保険適用】

全身、顔・頭・ワキ・手のひら・足のうらなど広範囲の発汗に検討されます。

  • 抗コリン剤(プロバンサインなど):現在、多汗症の治療薬として唯一保険適応があるのが臭化プロパンテリン(プロバンサイン)。神経伝達物質の働きを抑制し、発汗をコントロールします。全身の発汗が抑制されるため、夏は熱中症のリスクがあり、服用には医師との相談が必要です。
  • 漢方薬:体質改善により余分な汗をかきにくくします。例:防已黄耆湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、瀉火補腎丸など。
(2) 局所的なその他の治療
治療法 部位と特徴 保険適用
ボツリヌス毒素注射 交感神経から汗腺への情報伝達を遮断し、発汗量を減少させる。ワキの多汗症に高い効果があり、満足度が高い。効果は4~6ヵ月持続。 あり
(腋窩多汗症の重症のみ)
水道水イオントフォレーシス 水道水に手足などを浸し、微弱な電流を流して汗腺の働きを低下させる。手のひらや足の裏の多汗に有効。 あり
最終手段:外科的治療
  • 内視鏡的胸部交感神経遮断術(ETS):発汗にかかわる胸部の交感神経を切除・遮断する手術。手のひらの多汗症には非常に高い効果があるが、約90%の人に背中、胸、胴回りなど別の部位から大量の汗をかく「代償性発汗」という重い副作用があるため、適応は非常に慎重に検討されます。

多汗症の予防法とは

多汗症の予防には、発汗を促す刺激物を控え、自律神経のバランスを整える栄養素を積極的に摂ることが有効です。

  • 控えるべき刺激物
    • 香辛料(カプサイシンなど):唐辛子やスパイスなど辛いものは、交感神経を刺激し発汗を促します。
    • カフェイン:コーヒー、紅茶、エナジードリンクなどに含まれ、交感神経を優位にするため、摂取を控えめにしましょう。
    • アルコール・喫煙:これらも交感神経を刺激し、発汗を増やす原因となります。
  • 積極的に摂りたい栄養素
    • ビタミンB群:エネルギー代謝を助け、自律神経を整える働きがあります。(例:豚肉、玄米、納豆など)
    • マグネシウム:神経の過剰な興奮を抑える作用があります。(例:アーモンド、ほうれん草、海藻など)
    • 温かいもの:冷たい飲み物や食べ物は、一時的に体を冷やした後、体温を戻そうとする反動でかえって発汗を促すことがあります。常温または温かいものを選びましょう。

また、多汗症はストレスや自律神経の乱れが大きく関わっているため、これらを整える習慣が重要です。

  • ぬるめのお湯での入浴
    • シャワーだけでなく、38〜40℃程度のぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、血流が良くなり、体温調節機能が安定しやすくなります。
  • 十分な睡眠とリラックス
    • 睡眠不足は交感神経優位の状態を長引かせます。質の良い睡眠を確保しましょう。
    • 寝る前のスマートフォン操作を避け、読書や音楽鑑賞など、リラックスできる時間を作りましょう。
  • 適度な運動
    • ウォーキング、ヨガ、ストレッチなどの軽い有酸素運動を習慣にすることで、自律神経のバランスが整い、汗腺機能の正常化にもつながります。

さらに、衣服とセルフケアの工夫をしていくと良いでしょう。

  • 通気性と吸湿性に優れた衣類
    • 綿(コットン)、麻、リネンなどの天然素材や、吸湿速乾加工が施された化学繊維を選び、蒸れを防ぎましょう。
    • 汗ジミが目立ちにくい色(グレーや薄い色など)や素材を選ぶ工夫も有効です。
    • 汗をかいたらこまめに拭き取り(ウェットシートなどで肌の清潔を保ちつつ、必要な湿気は残すように)、着替えることが大切です。
  • 制汗剤とデオドラント剤の活用
    • 制汗剤:汗の量を少なくしたいとき。汗腺を塞いで発汗を抑制します。
    • デオドラント剤:においを防ぎたいとき。においの原因菌の繁殖を防ぎ、においを低減します。
    • 使用する際は、入浴後など肌を清潔にして完全に乾かしてから塗布すると、成分が肌に密着しやすく効果が高まります。

多汗症は、患者様の人生を大きく左右する「汗の失禁」というべき機能失調です。
多汗症は諦める病気ではありません。
もし、ご自身やご家族が、汗によって学業、仕事、人間関係で不便や苦痛を感じているなら、それは治療が必要な「病気」です。多汗症について正しく理解し、専門医にご相談いただくことが、快適で自信に満ちた日常を取り戻すための確かな一歩となります。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME