帯状疱疹
帯状疱疹は、子どもの頃に多くの人がかかった水ぼうそうのウイルスが原因で起こる病気です。このウイルスは、水ぼうそうが治った後も体内の神経節に潜んでおり、免疫力が低下した時に再び活動を始め、神経に沿って「ピリピリ」「ズキズキ」とした痛みや、赤い発疹を引き起こします。
一般的に知られている痛みや発疹の他に、「なんだか体の片側だけが痛い」「虫刺されかと思っていたら広がってきた」といった症状で始まることもあります。また、子育て世代の方にとっては、忙しい毎日の中で突然の激しい痛みに襲われ、生活に支障をきたすことも少なくありません。
ここでは、帯状疱疹がなぜ発症するのか、そしてご自身や大切なご家族を守るために知っておきたい予防法や、発症してしまった場合の対処法について解説します。
帯状疱疹とは
帯状疱疹の症状は、時間とともに変化していくのが特徴です。一般的に、以下の3つの段階を経て進んでいきます。
1. 前兆期:痛みや違和感が先に現れる
発疹が現れる数日前から、体の左右どちらか一方の神経に沿って、「ピリピリ」「チクチク」とした痛みや、かゆみ、しびれのような違和感が現れます。この段階ではまだ発疹がないため、原因がわからず「虫刺されかな?」「どこかにぶつけたかな?」と思う方も少なくありません。また、この時期に発熱やリンパ節の腫れなど、風邪に似た全身症状がみられることもあります。
2. 発症期:発疹と水ぶくれが現れる
前兆期から数日後、痛みのあった場所に赤い斑点(紅斑)が現れ始めます。この赤い斑点は、時間が経つにつれて盛り上がり、中に透明な液体を含む水ぶくれへと変化します。この水ぶくれは、神経に沿って帯状に広がるのが特徴で、「ズキズキ」「キリキリ」とした強い痛みを伴うことが一般的です。
3. 回復期:かさぶたになり、治癒へ
発症から1~2週間ほど経つと、水ぶくれは破れてかさぶたになり、徐々に乾いていきます。かさぶたが剥がれると、その部分には色素沈着(シミ)が残ることがありますが、通常は数週間から数か月で薄くなっていきます。
帯状疱疹の症状の多様性と合併症について
帯状疱疹は体のどの部分にも起こり得ますが、特に上胸部や背中、顔(おでこなど)に多く見られます。また、発症した部位によって、痛みだけでなく様々な形で現れることがあります。
- 痛みの特徴:帯状疱疹の痛みは、通常、発病から2週間後にもっとも強くなることが多く、夜も眠れないほどになることがあります。また、他の症状が消えても痛みだけが残ることもあります。一度消えた痛みが数ヶ月〜数年後に再び現れる場合もあります。
- 麻痺症状:帯状疱疹が首や胸にできると腕の力が弱くなったり、腰にできると足の力が弱くなったりするなど、運動麻痺を伴うことがあります。
- 顔や目の合併症:耳の周囲に発症した場合、顔面神経麻痺や難聴、めまいなどを併発することがあり、これはラムゼイ・ハント症候群として知られています。また、目の周りに発症した場合は、ウイルス性角膜炎などの重い目の合併症を引き起こす可能性があり、特に鼻の根元から先端にかけて発疹がみられる場合は、注意が必要です。
帯状疱疹後神経痛(PHN)に注意
皮膚の症状が治まった後も、痛みが長期間にわたって続くことがあります。これを帯状疱疹後神経痛(PHN)と呼び、特に高齢の方や、もともと持病がある方に起こりやすいとされています。この後遺症を防ぐためにも、症状に気づいたらできるだけ早く医療機関を受診し、適切な治療を開始することが非常に重要です。
帯状疱疹の原因は?
帯状疱疹の原因は、子どもの頃に多くの人がかかった水ぼうそう(水痘)と同じウイルスです。水ぼうそうが治った後も、このウイルスは体内の神経節に潜んでおり、通常は私たちの免疫力によって活動を抑えられています。
しかし、以下のような理由で免疫力が低下すると、潜んでいたウイルスが再び活動を始め、神経を伝って皮膚に到達し、帯状疱疹として発症します。
- 加齢:50歳を過ぎると発症率が高まります。加齢に伴い免疫機能は自然と低下するため、特に高齢者に多く見られます。
- ストレスや過労:精神的・肉体的なストレスや疲労の蓄積は、免疫力を弱める大きな要因です。
- 睡眠不足や不規則な生活:免疫力を保つためには、十分な睡眠と規則正しい生活習慣が不可欠です。
- 病気や薬:がんや糖尿病などの病気、または免疫を抑制する薬(ステロイド剤など)の服用も、免疫力を大きく低下させます。
帯状疱疹の診断と検査は?
帯状疱疹の診断は、医師が患者様の既往歴と、特徴的な皮膚症状を診察で確認することが基本です。
- 問診と視診:まず水痘(水疱瘡)にかかった経験があるかを尋ねます。水痘・帯状疱疹ウイルスは、水痘が治った後も体内の神経節に潜伏しており、免疫力の低下などをきっかけに再活性化することで帯状疱疹を発症するためです。次に、水ぶくれやただれなど、帯状疱疹に特徴的な見た目の症状を確認することで、診断が下されることが多いです。
- 鑑別と確定診断のための検査:単純ヘルペスなど、帯状疱疹と似た症状を示す病気もあるため、他の皮膚疾患と見分けがつきにくい場合には、検査が行われることがあります。
- 水痘・帯状疱疹ウイルス抗原迅速検査:患部を綿棒で軽くこすって検体を採取し、迅速検査キットでウイルスの抗原を検出します。約10分で結果がわかり、迅速な診断と治療開始が可能です。
- 血液検査:神経痛の症状はあるものの、まだ発疹が出ていない初期段階の場合に、血液中の水痘・帯状疱疹ウイルスに対する抗体の量を調べ、診断の手がかりとすることもあります。
帯状疱疹は、早期に治療を開始することで、重症化や合併症のリスクを減らすことができます。神経痛のような症状があるものの発疹がない場合でも、早めに医療機関を受診することが大切です。
帯状疱疹は人にはうつる?
帯状疱疹そのものが、他の人にそのまま「帯状疱疹」としてうつることはありません。
しかし、帯状疱疹の原因であると同じウイルスが、水痘(水疱瘡)にかかったことがない人や、予防接種を受けていない人に対して、水痘(水疱瘡)としてうつる可能性があります。
多くの人はすでに水痘(水疱瘡)の免疫を持っているため、帯状疱疹の患者さんと接しても感染することはまれです。
感染のリスクと予防策
- ウイルスの存在場所:帯状疱疹のウイルスは、水ぶくれの中に大量に含まれています。
- 感染経路:主な感染経路は、この水ぶくれが破れて出てくる液体に直接触れることです。
- 感染しやすい人:免疫力が低い乳幼児、妊婦さん、高齢者などが、特に注意が必要です。
ただし、水ぶくれがガーゼや衣服で覆える場所に発症している場合は、ウイルスに触れる機会が少ないため、感染の可能性は極めて低いと言えます。
帯状疱疹の治療法とは?
当院では、主に内服薬と外用薬を使い帯状疱疹を治療しています。また、帯状疱疹の合併症に対しても、各種施術で対応しています。
内服薬
1. 抗ウイルス薬
帯状疱疹の治療において最も重要なのが、ウイルスの増殖を抑えるための抗ウイルス薬です。発症からできるだけ早く服用を開始することで、ウイルスの増殖を抑え、合併症や重症化のリスクを減らすことができます。
患者様の年齢、体重、腎機能などを考慮し、バルトレックス、ファムビル、ゾビラックスなどの内服薬を投与します。
薬は通常1週間分処方されます。効果が現れるまでに3日ほどかかることがあるため、自己判断で服用を中止せず、処方された期間は必ず服用してください。
2. 痛み止め
帯状疱疹は強い痛みを伴うことが多いため、痛みをコントロールすることも重要です。
痛みが強い場合には、カロナールなどの一般的な痛み止めや、リリカカプセル、トラムセットといった神経の痛みに特化した薬を処方します。
外用薬
水ぶくれやただれがある患部には、炎症や細菌の二次感染を防ぐために、抗菌薬の塗り薬を処方することがあります。水ぶくれが破れた場合は、患部を清潔に保ち、薬を塗ってガーゼで保護してください。
その他の治療
痛みが非常に強い場合、当院で処方する薬では痛みがコントロールできない場合は、ペインクリニックを紹介し、早期に神経ブロック注射を受けていただくこともあります。その他、一時的に痛みを和らげるために、温湿布やカプサイシン軟膏、リドカイン軟膏などを使用することもあります。
その他の治療(自由診療)
帯状疱疹の症状が治まった後も、肌に色素沈着やへこみが残ることがあります。これらの症状は自然に治りにくいため、当院では以下の自由診療で対応しています。
色素沈着の治療
- 塗り薬:色素沈着が残った場合、「ハイドロキノン」や「トラネキサム酸」などの塗り薬を処方することがあります。ハイドロキノンはメラニン色素を、トラネキサムム酸は炎症を抑えることで、色素沈着にアプローチします。効果を実感するまでには、どちらも約3か月かかります。
- レーザー治療:当院では「PQXピコレーザー」という機器を使った治療を行っています。弱いパワーでレーザーを照射する「ピコトーニング」により、症状の悪化を防ぎつつ色素沈着を改善します。効果を実感するには、1か月に1回程度の施術を最低5回続けることが目安です。
へこみの治療
帯状疱疹後のへこみは、放置しても自然に治ることはありません。当院ではニキビ跡の治療と同様に、以下の方法で対応しています。
- ジュベルック注射:「ポリ乳酸」という成分が含まれた薬を患部に注入することで、コラーゲンの生成を促し、へこみを改善します。3回以上の施術で効果を実感しやすくなります。
- ダーマペン:髪の毛よりも細い針で皮膚に小さな穴を開け、肌の自然治癒力を高めることで、へこみを改善します。
※これらの治療は、公的医療保険が適用されない自由診療です。料金や詳細については、診察時にご相談ください。
帯状疱疹の予防とは?
帯状疱疹の予防には、主に2つの方法があります。
1. 予防接種(ワクチン)
帯状疱疹の予防に最も効果的な方法は、ワクチンを接種して免疫力を高めることです。現在、日本で接種できる帯状疱疹ワクチンは2種類あり、いずれも50歳以上の方が対象です。
帯状疱疹は50歳以上で発症率が増加し、特に高齢者では、発疹が治った後も痛みが残る「帯状疱疹後神経痛(PHN)」のリスクが高まります。水痘(水疱瘡)にかかったことがある人でも、年齢とともにウイルスへの免疫力が弱まるため、ワクチンを接種して免疫を強化することが大切です。
ワクチンの種類
| 特徴 | 水ぼうそうの予防にも使われるワクチンで、弱毒化された生きたウイルスを接種します。比較的安価ですが、免疫力が低下している人には接種できません。 |
|---|---|
| 接種回数 | 1回 |
| 予防効果 | 約50% |
| 効果の持続期間 | 約5年 |
| 特徴 | ウイルスの一部を使った不活化ワクチンです。予防効果が非常に高く、免疫力が低下している人でも接種が可能です。生ワクチンに比べて高価です。 |
|---|---|
| 接種回数 | 2ヶ月以上の間隔を空けて2回接種します。 |
| 予防効果 | 90%以上 |
| 効果の持続期間 | 10年以上 |
予防接種は帯状疱疹を完全に防ぐものではありませんが、発症しても症状が軽く済むという報告があります。どちらのワクチンを選ぶかは、医師とよく相談して決めましょう。なお、2025年度から、一部の自治体で帯状疱疹ワクチンの定期接種が開始されています。詳細はお住まいの自治体にご確認ください。
当院でも、随時接種可能です。詳しくはお電話にてお問い合わせください。
2. 日常生活での免疫力維持
帯状疱疹は、疲労やストレスなどによる免疫力の低下が発症の引き金となることがあります。日頃から免疫力を保つ生活を心がけることも重要です。
規則正しい生活: 十分な睡眠をとり、規則正しい生活リズムを保ちましょう。
バランスの取れた食事: 栄養バランスの良い食事で免疫力を高めます。
適度な運動: 無理のない範囲で体を動かしましょう。
ストレス軽減: ストレスを溜めないよう、リラックスする時間を持ちましょう。
これらの予防策は、帯状疱疹の発症リスクを減らすだけでなく、万が一発症した際の重症化や後遺症のリスクを低減させることにもつながります。
