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脂漏性皮膚炎

フケや頭皮の赤み、鼻の周りのベタつきといった症状は、単なる乾燥や肌荒れと思われがちですが、それは脂漏性皮膚炎かもしれません。

多くの方が経験しながらも、原因が分かりにくく再発しやすいこの皮膚疾患は、市販薬で一時的に症状が治まっても、いつの間にか繰り返してしまう厄介な特徴を持っています。

ここでは、この脂漏性皮膚炎について、その発症の真の原因、常在真菌マラセチアとの関係、そして治療アプローチまで、詳細かつ分かりやすく解説します。

脂漏性皮膚炎とは

脂漏性皮膚炎は、皮脂腺が発達し、皮脂の分泌が多い部位(脂漏部位)に慢性的に発症する炎症性の皮膚疾患です。

頭皮、顔面(眉毛、鼻の周り、耳の後ろ)、胸の中央、背中の上部など、皮脂の多い場所に好発し、炎症による紅斑(赤み)を伴い、鱗屑(りんせつ)と呼ばれる白~黄色の脂っぽい皮膚の剥がれ(頭皮ではフケ)が生じます。かゆみ(掻痒)を伴うこともあります。

慢性化しやすく、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す(再発性)傾向があります。

脂漏性皮膚炎の分類とは

 脂漏性皮膚炎は、発症時期と経過によって以下の2つに分類され、現れやすい場所や症状、予後(経過)が異なります。

特徴 乳児型脂漏性皮膚炎 成人型脂漏性皮膚炎
主な発症時期 生後数週間〜数ヶ月(2〜4週間頃に発生) 思春期以降、特に中年以降(40歳ぐらいまで)
性別傾向 男女差なし 皮脂分泌量の多い男性に多い
主な原因 胎児期に母体からもらう女性ホルモンによる皮脂の過剰分泌が主体。 皮脂過剰、マラセチア菌の異常増殖、免疫応答の異常などが関与。
好発部位 頭皮(乳痂)、顔面、間擦部(脇の下、股など) 頭皮(フケ症)、髪の生え際、顔面(眉毛、鼻の周り、耳の後ろ)、胸部正中部、わきの下、股間など。
症状の特徴 頭皮に黄色の厚いかさぶた(乳痂)、その他に紅斑や落屑、湿疹。 鱗屑(フケ)を伴う紅斑。痒みを伴う場合と、伴わない場合がある。
経過と予後 一過性で、通常、生後8〜12ヶ月頃までに自然治癒することが多い。 慢性的で再発性の経過をたどる。自然治癒は期待できず、根気強い治療が必要。
治療 正しいスキンケアが主体。 皮膚科での薬物治療(抗真菌薬、ステロイド外用薬など)が必須。

脂漏性皮膚炎の原因とは

脂漏性皮膚炎の病態は完全に解明されていませんが、主に以下の3つの主要な要因が相互に作用して発症・悪化に関与していると考えられています。

1. 常在真菌「マラセチア属真菌」の関与

脂漏性皮膚炎の発生に最も深く関わっているのが、皮膚の常在菌であるマラセチア属真菌です。

皮脂の分泌が多い脂漏部位でマラセチア菌が異常に増殖すると、マラセチアは皮脂の主成分であるトリグリセリド(中性脂肪)をリパーゼという酵素で分解し、遊離脂肪酸(特にオレイン酸)を多く産生します。

この遊離脂肪酸が皮膚に刺激を与え、炎症反応を引き起こすことで、紅斑(赤み)や鱗屑(フケ)などの症状が惹起されます。

2. 皮脂の質と量の変化

マラセチアの増殖環境と炎症の発生に、皮脂の状態が影響します。

皮脂の分泌量が増加すると、マラセチアの栄養源が増えるため、菌が増殖しやすくなります。

成人型では、皮脂中のトリグリセリドに対するスクアレンやコレステロールエステルの比率など、皮脂の組成異常も病態に関与する可能性が示唆されています。

3. 宿主側の要因(増悪因子・生活習慣)

脂漏性皮膚炎の悪化や発症には、マラセチア菌や皮脂の異常だけでなく、宿主側(個人)の様々な要因も関与しています。

主な要因としては、マラセチアに対するT細胞による炎症応答の異常といった免疫機能の不均衡が挙げられます。また、ストレス過多、寝不足、偏った食生活などの生活習慣の乱れや、ビタミンB2・B6などの代謝異常も症状を悪化させる要因となります。

さらに、他の疾患との合併も重要であり、パーキンソン病などの神経疾患では皮脂腺の活動性変化から重症化することが知られています。HIV感染症(AIDS)などによる免疫不全がある場合は、マラセチアの異常増殖を招き、脂漏性皮膚炎が重症化する傾向が認められます。

したがって、脂漏性皮膚炎の改善には、皮膚科での適切な薬物治療に加え、日常生活における生活習慣の見直しと正しいスキンケアが不可欠となります。

脂漏性皮膚炎の診断とは

脂漏性皮膚炎の診断は主に臨床症状に基づいて行われますが、他の皮膚疾患、特に真菌感染症との鑑別が重要となります。

1. 診断

項目 詳細
主要な診断 問診と視診による臨床的な診断が基本です。
診断の根拠 脂漏部位(皮脂の多い場所)に、紅斑(赤み)と鱗屑(フケやカサブタ)が認められること。軽度の掻痒(かゆみ)を伴うこともあります。
補助的検査 皮膚の一部を採取して顕微鏡検査を行い、白癬やカンジダなどの真菌(カビ)感染症(頭部白癬など)の有無を調べて鑑別することがあります。

2. 重要な鑑別診断

脂漏性皮膚炎と症状が似ているため、特に頭皮の病変で鑑別が必要となる主な疾患は以下の通りです。

  • 尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん):
    • 症状:鱗屑を伴う紅色局面が、脂漏性皮膚炎に比べて境界が非常に明瞭です。
    • 鱗屑:脂漏性皮膚炎の黄色調で脂ぎった鱗屑とは異なり、一般に銀白色で厚い鱗屑です。
  • 頭部アトピー性皮膚炎:
    • 症状:細かい白色の乾燥した鱗屑が主体です。
    • 鱗屑:脂漏性皮膚炎のような脂ぎった黄色調の鱗屑はあまり見られません。
  • 接触皮膚炎(かぶれ):
    • 原因:シャンプーや整髪料など外部刺激が原因で発生します。
    • 鑑別:原因物質を特定するためにパッチテストなどを行うことがあります。

脂漏性皮膚炎の治療法とは

成人型の脂漏性皮膚炎は自然治癒が期待できないため、継続的な治療が重要です。治療は主に「マラセチアの増殖抑制」と「炎症の鎮静化」を目的とし、薬物療法とスキンケア指導を組み合わせて行われます。

1. 薬物療法

主に以下の外用薬を症状や部位に合わせて使い分け、または併用します。

治療薬の種類 目的と作用 補足事項
ステロイド外用薬 炎症を抑える働きがあり、紅斑や掻痒といった炎症症状が強い場合に速効性を期待して使用されます。 作用の強さや、軟膏・クリーム・ローションなどの剤形を、症状や塗布部位(顔、頭皮など)に合わせて選択します。
抗真菌外用薬 マラセチア菌の増殖を抑制する働きがあります。成分としてはケトコナゾール(例:ニゾラール®)などが汎用されます。 炎症が軽度な場合や、症状改善後の再発予防として長期的に使用されます。多くの場合、ステロイド外用薬と併用されます。

2. 治療継続と維持療法

  • 治療の初期:薬が効きやすい疾患であり、治療開始後多くの場合、症状は改善に向かいます。
  • 維持療法への移行:ステロイドの長期連用による副作用(皮膚萎縮など)を避けるため、炎症が治まったら、抗真菌外用薬単独での維持療法に切り替えることが推奨されます。
  • 治療の継続:脂漏性皮膚炎は再発しやすいため、「良くなったから」と自己判断で薬を中止せず、主治医の指示に従って継続的に治療を行うことが極めて重要です。

3. その他の補助的な内服薬

  • 抗ヒスタミン薬:かゆみ(掻痒)が強い場合に、飲み薬として処方されます。
  • ビタミンB2・B6製剤:皮脂の分泌を抑える目的で、補助的に用いられることがあります。

治療効果を最大限に高め、再発を防ぐためには、薬物療法と並行した正しいスキンケアや生活習慣の見直しも不可欠です。

脂漏性皮膚炎の再発予防とは

脂漏性皮膚炎は慢性化・再発しやすい疾患ですが、適切な薬物治療に加え、日々のスキンケアと生活習慣を見直すことで、症状をコントロールし、再発を防ぐことが可能です。

1. スキンケア(洗浄のポイント)

項目 実践ポイント
洗浄の目的 過剰な皮脂や鱗屑(フケ)を除去し、頭皮・皮膚を清潔に保つことが重要です。
洗浄剤の選択 低刺激性の石鹸や、原因菌であるマラセチアの増殖を抑える抗真菌成分入りシャンプー(例:ミコナゾール硝酸塩配合)の使用が推奨されます。
洗い方 強くこすったり、洗浄成分の強いものをあえて選んだりする必要はありません。自分の肌に合った洗浄剤を使い、優しく丁寧に洗いましょう。
すすぎ 洗浄成分のすすぎ残しは刺激となるため、石鹸やシャンプー、リンスなどが残らないようにしっかりと洗い流しましょう。
メイク 顔に赤みなどの症状が出ている間はメイクは控える方がベターです。使用する場合は刺激の少ないものを選び、夜はこすらずにしっかり落とすことが大切です。

2. 生活習慣の改善

脂漏性皮膚炎は、ホルモンバランスの乱れや免疫機能とも関連するため、内側からのケアも重要です。

A. 食事の見直し
  • 推奨される栄養素:皮脂の分泌を適正にコントロールする働きがあるビタミンB群(B2やB6など)を意識して摂取しましょう(例:レバー、うなぎ、ホウレンソウ、トマトなど)。
  • 控えるべきもの:皮脂分泌を促進する可能性がある脂肪分や糖分を多く含む食品、アルコール、香辛料などは摂りすぎないように気を付けてください。
  • 基本:バランスの取れた食生活を心がけましょう。
B. 規則正しい生活
  • 睡眠とストレス:睡眠不足、過労、ストレスの蓄積はホルモンバランスを乱し、皮脂を増やす原因となり症状を悪化させます。
  • 対策:良質な睡眠をとれるよう生活リズムを整え、適度な休養やリラックスできる時間(気分転換)を確保することが勧められます。

脂漏性皮膚炎は、正しい知識と継続的なケアがあればコントロール可能な疾患です。
重要なのは、原因菌へのアプローチと炎症の鎮静化を両立させ、さらに生活習慣を整えることです。
健やかな毎日を取り戻すため、今日から治療とケアを始めていきましょう。

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